若いネコの会 

一番奥が菅直人似の某君
同期会2

年1回の高校同期会が終わった。歌舞伎町の日本料理屋で4時から始まって、カラオケタイムを含めても10時まで6時間はさすがに長い。ここは個室で長居できるのはいいが、和服のコンパニオンが付いたり、料理が上品すぎて食べた気がしなかったりする点は賛否が分かれる。それに店の周りがホストクラブだらけという土地柄も女性に嫌われている。我々の同期生は首都圏に50人以上いるが、最近の出席者は10人ちょっと。あえて顔を出すメリットが感じられなくなっているのだろう。みな心理的にも身体的にも余裕がなくなっているらしい。私は今のところ何とかついていっているが、遠出したり1泊だのという提案は気が重い。今回は12人が出席したが、その中の1人は首都圏ではなく九州からの特別参加。まだ現役の技術者で海外にも時々出かけている男だから、東京などどうということはない。ちょっと見には菅直人そっくりの風貌で驚いた。

我々は東京人のような顔をしているが根っこのところは地方人である。その根っこの部分のアイデンティティを確かめるのが(少なくとも我々の)同期会という場ではないか。東京人の仮装を解き、南部弁・津軽弁を出さないまでも通じる場があることがわかればそれでいい。猫が1日1回やる会議を年1回やっているようなものだ。お互いの匂いを嗅げば安心するのだ。

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蛇崩2 

蛾

前にも書いたように、以前は蛇崩に住んでいた。蛇崩は交差点の名前で所番地は上目黒五丁目。すぐ後ろは世田谷区である。蛇崩へ下りる緩い坂は半兵衛坂という。最寄り駅は東横線の祐天寺だが、15分弱かかるうえ坂ばかりなのには閉口した。急行の停まる中目黒までは20分ほどかかった。祐天寺から蛇崩へ行く途中、五本木という高級住宅街を通るのだが、そのどこかにゾルゲ事件に斃れた尾崎秀実の家があったと聞いた。

そこへ引っ越した当初の話である。夜遅く祐天寺駅に降りたが、勝手を知らない街でどっちへ行けばいいか皆目見当がつかない。まだコンビニなどもない時代だ。表通りの大きな店は皆閉っている。そこで路地の奥の灯りがついている店で聞こうと思った。何の店か知らない、いやもう店ではないようだが、中で人の気配がするので近づいたのだ。戸を開けると3人の男が談笑中であった。私が「すみません。上目黒五丁目へ行きたいんですが」と言うと、1人が「上目黒は確か四丁目まで。五丁目はないよ」と断言する。「いや、ありますよ……現に私が住んでるんです」と言うと、「私が住んでるって?」とバカにしたように言い返し、3人でワハハハハと笑った。気分が悪くて私はすぐそこを出た。その後どうやってアパートへ帰り着いたかは記憶にない。後でくだんのしもた屋を探してみたが、どうしても見つけられなかった。

東京といえどもこの辺りは100年くらい前までは里山だった。狸や狐や河童の生活の場だったのだ。彼らは決して滅びたわけではなかった。夜になるとこうやって人間に姿を変え、とっぽい田舎者をからかい楽しんでいたのかもしれない。コンビニの灯りが24時間点きっぱなしの現代では、もう彼らの出番はなさそうに見えるが果してそうだろうか。
     

愛とカルシウム不足 

麻布十番

今週は麻布十番が大変忙しい。日曜日は午後から呼ばれて夜9時近くになり、月曜も10時。火曜日からは11時始まりに変更となり、終わりはやはり9時、10時。空くときもあるが、ほとんどは時間を睨みながらの連続特急作業だ。しかしこの会社は若くて可愛い女性社員やアルバイターがたくさんいるので退屈しない。とはいえ、人口密度の超高いフロアに8時間以上いて、人の吐いた空気やトナー交じりの濁った空気ばかり吸わされていると、さすがにぐったりする。

ここの仕事で読んだのだが、ちょっと面白い小説があったので紹介しよう。既刊本だから問題あるまい。木村 航の『愛とカルシウム』という作品で、タイトルはアンジェイェフスキの『灰とダイヤモンド』のもじりであろうか。もうすぐ19歳になる環は岩手県中部の介護施設で車いすとベッドの生活。彼女はHDS(ハンプティ・ダンプティ・シンドローム)という難病に冒されている。HDSとは人間の身体が外側から石灰化していく(架空の)病気だが、そんな境遇の環が巣から落ちたスズメのヒナを拾い育てようとする。青春小説という惹句は間違いではないしまったくそのまんまだが、介護施設での生活や心理のディテールがこと細かに書き込まれているのには驚く。実際に介護施設で生活あるいは仕事を経験した人でないとここまで書けないだろう。しかし著者のプロフィールは釜石生まれという以外わからない。もう1つの特徴は、会話の大半が南部弁で書かれているということだ。メジャーな方言で書かれた小説は珍しくないが、南部弁が飛び交う小説はそんなにない。三浦哲郎先生だってもっと控えめに使っていたぞ。