花の命は短くて 

北砂4丁目
北砂4丁目

月曜日は東京駅近くのFBI本部並にセキュリティが厳しい例の高層ビルで仕事。終了間際になって世話役から、この仕事は今月で終わりと言われた。ということはこの日で終わりということである。月1日か2日のものだが、それでもこっちへ移ってから3年は続いたのではなかったか。まったくもってガッカリだ。お得意さんの担当者に挨拶をする間もなく逃れるように外へ出て、その足で新宿のコニカミノルタプラザへ向う。大倉将則「PRIMROSE 選んだ風景」と池口正和「東京の片隅で」。後者は期待していなかったがちょっとした拾い物であった。東京の繁華街やビルの谷間などに生きる猫を撮ったもので、ありがちなテーマだし先日もルーニィで似たような写真を観たばかり。だが、池口の写真は人間の知らない猫の生活圏に深く入り込み、といって決して密着することなく撮られている。私自身が1つの仕事(=食事)にあぶれた直後だからか、猫たちの厳しい世界にすんなり共感できた。特にビル街のどん底、夕日の渋谷川を渡る猫の姿が印象的だ。
   

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仰げば尊し 

北砂5丁目
駐車場

この4日間、麻布十番の雑誌の仕事で拘束され、特に3日目は昼12時20分から夜11時まで休みなしで働き続けた。我々は労働者ではなく業務委託なので休みがなくても法に触れることはない。空き時間に本棚の本を読んだりするが、ソフトバンク・クリエイティブのサイエンス・アイ新書が全巻揃っているので大変ためになる。

さて、素数ゼミというのをご存じだろうか。それは数学だけを専門に教える進学予備校である、というのはウソ。素数ゼミとは北米で13年または17年という素数の周期で大発生する蝉のことで、周期ゼミとも呼ばれる。静岡大学の吉村仁が『素数ゼミの謎』でそう名付けたのだが、その続編がサイエンス・アイ新書の『素数ゼミの秘密に迫る!』だ。結論から言えば、進化の中で発生が重なる頻度が最も低い13年・17年という素数の周期のセミが生き残ったというもの。本書には地球の歴史を背景にした生物の生活史と進化のドラマが描き出されている……はずだが、仕事の合間ではなかなか呑み込めない。ただ、日本のセミは世界で一番種類が多く、そのため最も多彩な鳴き声を聞かせてくれるらしい。種類が多いので単調な鳴き声では配偶者を見つけにくいからだという。

ところで、この本の中に恩師M先生の名前を見つけてびっくりした。M先生はコオロギ博士とも称されるエントモロジストで、昆虫の生活史の研究でつとに有名である。またしても「偉大な師と不肖の弟子」パターンになるが、勘弁してもらいたい。M先生を考えるとき、つい私は先日物故した吉本隆明と重ねてしまうのだ。先生は吉本より3つ歳下ではあるが、同じ射手座であり風貌もどことなく似ている。なによりそのカリスマ性と学問への火のような情熱がそっくりだ。今年の年賀状に近々上梓される本のことが記してあり、末尾に手書きで「君には関係ないでしょうが」とあって私はいささかがっかりした。でもそれが不肖の弟子への先生らしい配慮なのであった。なお、私は昆虫のことは全然知らない。
      

孤立の冬 

浅草
浅草

3月11日。追悼の意味でポスティングは控えよとのお達しがあった。本来の仕事があり雨も多かったので日程は厳しくなるがやむを得まい。おかげで、できる日は午前と午後のダブルで配布するハメになった。

元祖バイリンギャルの山口美江さんが亡くなったというので、マスコミ各社は「孤独死」と書きたてている。TBSの「サンデージャポン」では、昨年11月に孤独死を取りあげたドキュメンタリー番組に山口さんが出演し、孤独死について語っていたというのでそのシーンを流していた。山口さんは「独身だから孤独死がホントに怖い」と言い、スーパーに行かず近所の店を使うようにし3日来なかったら気づいてもらえるようにしている、などと話していた。皮肉なものだ。この冬、家族で亡くなるいわゆる「孤立死」も相次いで発見されたが、部署同士の情報交換も禁ずる個人情報保護法の縛りが問題だという。それならば改正を検討してはどうか。

12日の参院予算委員会で自民の世耕弘成が、政権交代後に厚労省が出した生活保護に関する通達を追及していた。「保護の決定は申請者の窮状に鑑みて可能な限り速やかに行う」とした厚労省通達が自治体にとっての金科玉条になり、年間予算が7千億円膨れあがったというのだ。これでは消費税率を引き上げても意味がないとの世耕の主張に、小宮山厚労相は「基準を甘くしたわけではない」と弁明していたが、支給されるべき人に支給されていれば問題はない。ところが昨年末に旭川で発見された姉妹の孤立死では、基準のはるか下であったが支給されなかった。申請主義の限界である。日本の役所は住民が飢えようが死のうが絶対に矩を越えようとしない。