わたしの街はいつも夕ぐれ 

新板橋
新板橋

月曜日は新板橋まで「短歌と写真のコラボ」と称する「薄い街」展を観に行ってきた。会場はカフェ百日紅という喫茶店。短歌・佐藤弓生、写真・田中流。佐藤は女性歌人で歌誌「かばん」所属。2001年、『眼鏡屋は夕ぐれのため』で第47回角川短歌賞受賞。『薄い街』(沖積舎)は第3歌集に当たる。どうやら店の人がこの歌人と縁があるらしい。
カフェ百日紅は新板橋駅から数分、下板橋、板橋の各駅からはもっと近い。板橋から西へ延びる緑道は谷端川の跡で橋はそのまま残されている。この辺りは緩やかな起伏と曲がりくねった道が、我が町には見られない魅力的な景観をつくっている。いくら歩いても飽きない街だ。夕方行ったが小さな店内に客は他におらず、歌集も読み放題。しかし、老人には照明が暗すぎて眼鏡がないと読みづらい。展示作品はポスター大の写真に直接短歌を打ち込んである。タイトルそのものが稲垣足穂からとられていることからわかるように、幻想的なイメージが立ち上がる歌風だ。といっても前衛短歌の難渋さとは違い至って読みやすい。小冊子ふうの歌集『真珠区異聞』(無料でもらえた。ラッキー!)から何首か掲げておこう。


  みずうみの舟とその影ひらかれた莢のかたちに晩夏をはこぶ

  泉とはいかなるところ鹿の目をしているきっといまのわたしは

  草原が薄目をあけるおりおりの水おと ここも銀河のほとり

  三日月のうごめきかすかいつか地にめれんげいろの蛾の群れるまで

    

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橋口伸一氏の立体造形展 

私もよく行くギャラリー、お茶の水のf分の1で橋口伸一展が開催されている。竹ひごや石膏など多種の素材を使った立体造形の展示である。橋口氏にとって初めての個展だという。初日はあいにく雨で心配されたが、会場フロアで黒衣(と思ったが実際は濃いエンジ色)の女性による創作ダンスも行われ、夕方には多くの友人・知人が集まった。なお橋口氏は1948年奄美群島の加計呂麻島生まれ。加計呂麻島は島尾敏雄が震洋隊隊長として赴任し、ミホと恋に落ちた島である。

橋口1 橋口2

彼の作品は過去にも太平洋美術会の作品展などで観たことはあるが、大勢の中の1つでは正直いってピンとこなかった。今回個展としてまとまったものを前にすると、門外漢にも漠然と志向するものがわかった。以前見た展示から十数年経ってはいるが、複数の自作品が共鳴する中で初めて表れるものもあろう。その意味で個展は成功だったといえる。
多くの人の興味を惹いたのは中央の「宙」という作品で、黒っぽい箱に縦横にアルミのパイプが貫通している。「2001年宇宙の旅」のモノリスではないが、今にもキーンという甲高い音が発せられるかのような謎めいた存在感がある。パイプを覗けば景色が万華鏡のように反射する遊び心が面白い。その他、竹ひごだけを組んだ新作「或る日」、木材と竹ひごの組み合わせ「室内ソナタ」、ゴム製の物体が空中に吊られる「夢と重力」、トルソを思わせる三角形を吊りさげた「クラムポンはくぷんぷわらう」。会期は土日しか残っていないが、ぜひ足を運んでいただきたい。土曜日は18:30、最終日は17:00まで。
     

たまには銀座へ 

北砂3丁目
夕焼け

久々に土曜の銀座へ行き、まずニコンサロンで土田ヒロミの「Berlin」、ガーディアンガーデンで広川泰士、それからBLDギャラリーでマイケル・ケンナを観ようとしたら、あいにくケンナの本のサイン会直前で人がゴチャゴチャしている。ケンナといえば6×6モノクロの寡黙・静謐な風景写真で知られ、もっと(少なくとも日本では)マイナーな作家だと思っていた。それが30年かそこらですっかりスターになっているのにうかつにも驚く。もっともそれは日本人でも同じで、私がかつて知っていた若手写真家はほとんど「先生」になっているのだから、こちらがついて行けなかっただけか。そんなことをいえば、昔、写真を観るのは銀座と相場が決まっていたが今は銀ブラも月1程度。リクルートがガーディアンガーデンをつくり、リコーのリングキューブ、BLDギャラリーもできたが、ひと頃の感覚でどうしてもまず四谷・新宿方面に足が向いてしまう。なお、広川泰士は90年代に全国の原発の写真を撮って本にしたが全然反響がなく、大震災の後にわかに注目されたという。四谷東長寺の地下ギャラリーでこの写真展を観た記憶がある。

銀座
銀座

歩行者天国で賑わう銀座の大通りで、若い女性が群がってカメラを向けているところがあった。近寄ってみると標識の上に猫が2匹寝そべっていて、それに向けカメラ(というかケイタイが多かった)をかざしていたのである。野良猫なのかそれとも誰かが持ってきて乗せたのだろうか。

亀島川水門
水門

銀座から八丁堀へ行き、湊の日本写真学院内にあるTHE GALLERYで中藤毅彦の「STREET RAMBLER-New York」を観る。こんなところに日本写真学院があることもギャラリーができたことも知らなかった。中藤のニューヨークは前に何度も観たことがあるものだが、高感度フィルムの荒れた質感が見事に決まっている。人の少ない休日、この辺りは川辺の風景が楽しめる場所でもある。日本橋川の支川、亀島川の水門が夕影の中に堂々たる姿を見せていた。