奨学生 

北砂4丁目
北砂4丁目

もう7、8年前のことになろうか。今日のように寒い年末の夜だったが、チャイムが鳴ったので開けると若い男であった。いや、その前にやり取りがあったのかもしれないが、覚えていない。新聞を取ってくれというのだ。いつもこの手の勧誘はがらの悪い専門の勧誘員が来て脅したりすかしたりするのに、この日来たのは配達の青年であった。彼の顔は切羽詰まったように青ざめている。聞けば販売店の社長が契約を取ってこなければ正月田舎へ帰さないというので、上(13階だろう)から回ってきたのに1つも取れない。何とかお願いできないかというのであった。私も1、2度見たことのある社長の顔が脳裏に浮かんだ。団地から遠からぬところにある販売店だ。姑息なやり方で契約を取ろうとしたあの男が社長では、真面目な社員は浮かばれない。今また帰省を餌に青年に無理難題を押しつけている。いつもは一言で断っている新聞だが、事情を聞けばそうもいかない。青年は必死の面持ちである。しばし考え込んだ末、結局6か月だけ取ることにした。亡くなった弟もこの新聞の奨学生として大学に通っていたが、人一倍要領が悪いのであちこち回された挙げ句、辞めてしまった。家へ来た青年もそんな奨学生の1人だったのであろうか。つい彼に弟の姿を重ねていた。
   

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コメント:

やりきれないね

桜宮高校の体罰で”自害させられた少年”とオーバーラップして見えた。青年にとって正月の帰郷は何事にも代えがたい事象だろう。それを人質にとって自分さえ儲かればよしとする経営者のやり方は、まさに体罰そのものではないか。もし何かあったらと思うとやり切れない気持ちでいっぱいだ。「命の尊さ」が風化される世情が哀しい。

Re: やりきれないね

シゴキですかね。そもそも配達の人間に勧誘を強要するなんてルール違反じゃないでしょうか。あの社長ならやりかねないと思ったほどあくどいヤツです。

うーん

7、8年前のことですか。なかなか。
学校でのいじめとは、大人の社会の縮図と、以前いじめが喧しく取り上げられたときに言われた言葉ですが、まだ生きているんですね。もっともブラック企業が大手を振って社会で生き延び、主流となっている現状ですから、このようなことが当然の世の中になってしまっているのかもしれませんね。
生き難い世の中、ますますいやな日本になってきましたね。

  • [2013/01/22 21:43]
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Re: うーん

もうちょっと前、10年くらい経っているかもしれませんが……。

この新聞は政府の御用新聞として憲法改正のお先棒を担いだりしてます。ブラック企業ならぬブラック政府になりかけているこの国ですから、何をか言わんやです。

厭わしき産業構造

 新聞奨学生として配達の業務で契約しているはずの青年に勧誘の仕事を(それもノルマ強制的に)させること自体が契約違反・不当労働行為でしょう。この販売店おやじのような話を聞くと「新聞はインテリが作ってやくざが売る」という言葉が実感される。尤もその新聞は紙面内容もインテリ的ではないのでは。
 それにしても、営業的な業務が苦手だからこそ選んだ仕事で、結局営業的な仕事をやらされるといった傾向は多いのだろう。「真面目に黙々と働く」という仕事ぶりを、それだけでは足りないとする産業構造(というよりは社会構造か)がそこにある。
千昌男の「北国の春」の2番に「兄貴も親父似で無口な二人が、たまには酒でも飲んでるだろうか」という一節がある。農業は営業的仕事の苦手な人を包容する職種だったのだろう。私も仕事柄「真面目に黙々と働く」職人を見る機会が多く、それを好ましく思うのだが、社会全体で見れば、そうした働き方でOKという世界は非常に小さくなっている。あたかも全職業人に営業的業務への強制力が働いているといってもいい。向き不向きはあるもので、非営業的に真面目な人の働き場もなくては職業にまつわる悲劇は増える一方だろう。そう簡単に解決策があるとも思われないが、違和感は否定しがたい。
普段の大納言殿なら、「お前のところの社長が悪い。そんな社長を喜ばせることはしたくない」と言いそうなところ、よく半年契約をしましたね。やはり弟さんとの二重写しですか。大納言殿の契約でその奨学生さんが何とか帰省できたと考えれば救われた気持ちです。いい話でした。

Re: 厭わしき産業構造

いやー、さすがGさん、いいとこ突いてますね。
いやな社長を喜ばすだけだというジレンマはありましたが、ともあれ青年の帰省を実現させなければなりませんからね。しかし無口は配達、能弁は勧誘というのも一面的でして、現代の契約獲得は頭脳戦ですよ。この新聞など「リサイクルをやってます」と言って来るので、○○新聞だろ!と訊くとそうだと認めるので、なぜ新聞を名乗らないんだと訊くと新聞の勧誘ではありませんだと。

野辺地からの流れ

が、私の頭の中では続いております。別のサイトで駄菓子屋がなくなったことなど、さびしいと述べましたが、私も今もたびたびかっぱ寿司を利用してはおりますが、もし野辺地を旅したとき、入るかどうか、たぶん地元ならではの店を探すでしょう。そういうものが無くなっているとすると、駅前食堂にいすわって、何か、陸奥湾でとれた魚でも頼むのかな……

Re: 野辺地からの流れ

野辺地ですか。私はもっぱら駅前の「つたや」という店で生ビールと天丼を頼んでます。寿司や刺身は自分で食べないのでわかりませんが、あると思います。職人の親父は無口ですが、味はいい。

普通に働いていれば、なんとか、しのげる時代

に、なってほしい。それすら出来ない人々が増えているようだ。あまり追い詰められると、人は他人にもやさしくなれない。いい時代ではない。どうも、野辺地とレンボーと、S君の孤独死と、タキオが、頭の中でぐるぐるしてますな。こんなときは、野辺地の言葉で話す仲居さんに地酒でもついでもらいたい。

Re: 普通に働いていれば、なんとか、しのげる時代

ありゃりゃ、落ち着いて下さい。

普通に働いていれば、なんとかしのげる時代からは遠ざかっています。おまけにインフレにでもなったら我々貧民の暮らしはめちゃくちゃになるでしょうね。ぼんぼんの安倍ちゃんにはわからないでしょうが……。

そうです。遠ざかっております。

私の書き方が、悪いのかなぁ? これから、にごり酒を飲みます。白菜の漬物が、ちょうどいいところです。大納言さんにも、わけてあげたい。

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