無理して行くことはない日 

野辺地
野辺地2

首都圏にまた雪が降るとかなんとか大騒ぎだった。10センチかそこらでいい気なものだ。雪の下で育ったから多少のことで驚きはしないが、20代の頃、大変な目に遭ったことがある。三戸町で役人をしていた時、私の担当地域は青森県の最南端、田子町だった。田子は今でこそニンニク生産日本一を誇るが、当時はさしたる産物はなかったと思う。田子まで三戸駅などから民営バスが通るほか、日に何本かの国鉄バスが県境の来満峠を越えて秋田に通じていた。私の担当は三戸・田子を流れる熊原川の最上流部、秋田・岩手との県境に接する部分であった。

初冬だったか春先だったか、ともかく雪は降っていない。私は農業情報誌を届けるために125ccのオートバイで事務所を出た。当時の我々の交通手段はもっぱら緑色のオートバイ(またはバイク)で、車が配備されるのは2年くらい経ってからだった。そのため私は自動二輪の免許を取った。未舗装路も多いからオーバーオールを着てゴーグルとタオルで厳重に防御するのが鉄則だった。
さて、道は熊原川の谷間を遡っていく。田子の町並みを過ぎしばらく走って私の区域に入ると、いきなり雪景色になった。雪はどんどん降ってくるし辺りはすっかり薄暗くなった。そこで引き返せばよかったのだが、私は雑誌を全部配り終えるまではと思い前に進んだ。もとよりチェーンは積んでいない。ゆっくり走ってもしばらくすると滑ってズデーンと転ぶ。重たい単車をやっと起こしてまた進むが、また転ぶ。足を掛けるバーがひん曲がってしまった。帰るにしてもまた同じ雪道を帰らなければならない。そこでまた転んですっかり雪まみれになった。やっとのことで三戸に戻ったら雪などどこにも見当たらない。騙されたような気分になった。事務所に着くと帰りが遅いのでみんな心配しており、無理して行くことはないと叱られた。調べてみると三戸と田子の標高差はせいぜい100メートル余りである。なぜこんな天候の違いが出たのかわからない。冬山での遭難もこんな局地気象の気まぐれで起きるのだろうか。
  

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コメント:

苦労したのに‥

冷たい言葉が返ってきたわけですね。
まずは労いがあって、それから「無理をしなくても‥」ですね。
それが記憶にないということはやはり労いはなかったのでしょう。労いがしっかりしていれば、大納言様も別の職業生活を送ったかも‥。
職場での一言の重要性‥。私の現役時代に重ね合わせて、思い返しながら反省もしています。

  • [2013/02/09 22:18]
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Re: 苦労したのに‥

> 冷たい言葉が返ってきたわけですね。

いや「叱られた」は言葉の綾というか何というか、流れを書いたまでで、べつに冷たい言葉ではありません。そういう状況で行く必要はないというもっともな指摘です。この記事の主眼は、苦労したが叱られたというところではなく、ちょっとの標高差、地形の差で気象が急変するということです。

あれまー、読み違えました

大変失礼しました。
山では標高差100メートルでも大きな差があり、幾度か厳しい体験をしました。が、人の住む里での経験としては確かに稀有かもしれません。
北東北の冬の気象は厳しいのですね。

  • [2013/02/10 00:20]
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Re: あれまー、読み違えました

私の苦労の内容をそのまま読んでいただきたいところです。

勇気ある撤退

まさに「事件は現場で起きる」ものなんですね。連絡もなく定時に来なければ、それを知らない(特に上司)者は心配もするが責任問題にもなりかねないので叱責は当然でしょうね。命が第一、仕事は二の次、天候を読んでさっさと帰りましょう。
今回の写真もイイネ!日本一寂しい町の雰囲気がよく出ています。

Re: 勇気ある撤退

叱られたという表現は言わば私の誇張です。そこばかり言及されるので困りました。「言われた」という方が事実に近い。その個所を削ってもいいくらいです。それより思いがけない気象の変化と私の苦労そのものを読んでいただきたいものです。

日本一寂しい町、寂しい町世界第2位。がんばれ!

滑走経験

まる20年前、私は50ccのホンダのカブで通勤してました。雪、あなどってました。前輪後輪、両ブレーキでもすべるスキーの風切る速さでしたな。恐いのなんの、後ろからノーチェーンの車が追いかけて滑って来るのですな。追突されそな恐怖感。その坂の長さおよそ200未満。電車で帰ればよかったのですな。結局家までたどり着けず、知り合いの家の庭に置かしてもらい、歩いて帰りました。

Re: 滑走経験

カブですかぁ。ブレーキを掛けるから滑るんですよ。といって掛けないわけにはいかないんでしょうね。ちょうど知り合いの家があったのはラッキーでした。私の場合は平地ですが、バスなどいつ来るかわからない山の中でしたから……。

神奈川と青森の人の密度の差に

救われたのですな。私は車も乗りますが、雪だけはあなどってはいけないと、いい経験です。車でしたら、アウトでしょうな。二輪車は自らひっくり返れぱ、危機一髪も、ありましょうが、4輪は厳しいです。私のテクニックでは無理ですな。雷電君でもこりゃあ無理だわ。チェーンか、スタッドレスで、藤川にたどり着くぞ!

Re: 神奈川と青森の人の密度の差に

雪も厳しいけど、春先にはタイヤとフェンダーの間に泥が詰まって動かなくなるトラブルもありましたな。何故そんなところを通ったかは疑問。青春はトラブルだらけです。

125はいいですな

無免許やってましので、わかります。、力強いですな。35年前の話ですので、許してくださんせ。青森一周したいですな。藤川の仲居さんを荷台に乗せて、私の腹に、手を回してもらい、夢のように飛ばしたいですな。いや、雪道ですので、押してもらったりもするのでしょうな。

Re: 125はいいですな

125と250がありました。どちらも実用車ですから重い。250だったら生還できなかったかも。

ところでそろそろ藤川旅館のことは忘れて下さい!

標高差100m

雪山から帰ってきたら、冬山遭難に触れた文章。縁起でもない、とパスするべきところ、とりあえず冬山の話でも。
冬山の遭難は、局地気象の気まぐれで起きるのではありません。遭難する時は付近の山も含めて全山遭難モード。100mの高度差はあまり問題にならないでしょう。100mによる温度差は0.6℃です。-20℃と-20.6℃。どちらも装備悪ければ十分遭難するでしょう。
局地的と言えば風でしょうか。よく話題になる体感温度。高度2500mの山上は平地0℃なら-15℃。これに風速15mが吹くと体感温度-30℃、これはたまらない。樹林帯に逃げ込めば何とかなるのだが、森林限界を超えた稜線では逃げ場もない。高度差100mが生死を分ける。関東・中部の山は高度2500m付近が森林限界だから冬山はこれ以下が無難か。富士山や八ヶ岳のようにすそ野が長い強風の名所で樹林帯少な目は要注意だろう。
東北の田舎であれば、危険なら農家に泊めてもらう、という手もありで、生命への危険はない、と思うのは部外者判断だろうか。平地での雪の生命的危険というと十三湖あたりのブリザードを思い浮かべる。大納言殿の勤務地の話は南部側に偏在していますが、津軽側での勤務はなかったのですか。それとも津軽に心情的な親和感がなかったのでしょうか。

Re: 標高差100m

> とりあえず冬山の話でも。

局地気象の気まぐれと書いたのは言葉の綾で、歌にも「娘心はよ~山の天気よ」とあるでしょう。つまり素人には計り知れないということです。0.6度の差が命取りということもあるでしょうよ。

> 大納言殿の勤務地の話は南部側に偏在していますが、津軽側での勤務はなかったのですか。それとも津軽に心情的な親和感がなかったのでしょうか。

生活はしていたが、津軽の勤務はナシ。心情的な親和性もありません。1か月だけ鰺ヶ沢で暮らしましたが、留守にしている間にアパートの電球を盗まれたのは驚きました。しかし、鰺ヶ沢は祖父が警官を辞めたあとで勤めていたところです。もう少し調べてみればよかったかとも……。

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