チラシ配り人の憂鬱 

路地

チラシ配りのバイトも2か月以上経ったが、今月は本業が忙しくてあまり成績が上がらなかった。地震のせいかチラシの到着も遅れた。前にも書いたが狭い路地のまた奥にくっつくように家が建ち、風通しが悪く陽の差さない環境がけっこう多い。道も当然、袋小路になっている。一旦火事にでもなったら悲惨な事態を招くことは明らかだ。今回のような地震しかりである。目に付くのは無人の廃屋となっている家、廃屋とはいえないが生活感がなく表札もなくなっているような家だ。汚れた郵便受けに古いチラシが詰め込まれっぱなしになっていたりする。真っ昼間、そこだけシーンと静まりかえっている。こういう場所に立つと何だか身震いするような怖さを覚える。社会から途絶した、ないはずの空間だからだろうか。

路地で配っているとどこからともなく歌が聞こえた。マヒナスターズの「北上夜曲」だ。それが終わり、ついで「寒い朝」が始まった。マヒナのアルバムらしい。赤い屋根・白い壁の一見瀟洒なマンションの二階から聞こえてくる。そこは路地が交差しているところなので何度も行き来せざるを得ない。必然的に「寒い朝」をずっと聞かされるはめになった。こちらも小声で歌いながらチラシを配る。見上げると女性がベランダに出てきた。よくわからないが我々と同じくらいの年代だろうか。今度は「泣きぼくろ」が掛った。自転車に乗った保険屋さんらしい女性の二人組がやってきて、「いい音楽が聞こえる」「カラオケだ」などと話しながら反対側の家の中に入っていった。
   

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