遠野の物語を巡って 

北区中央図書館/王子駅
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  ――勤労に大感謝して休みたり

日曜日は北区中央図書館へ本を借りにいった。赤レンガの建物は旧陸上自衛隊十条駐屯地275号棟を改装・増築してオープンしたものと聞く。北に中央公園が広がり、南隣りには工事中で入居前の都営住宅が灯りを点していた。行き帰り、音無川のそばを通る。音無川は石神井川の一部だったものを、本物の石神井川は飛鳥山公園の下を通し、音無川だけを江戸風の親水公園として残している。
北区の図書館へ何を借りにいったかというと、実は先日JCIIフォトサロンで観た森山大道「遠野物語」の図録を岩手の鳴海氏へ送ったところ、「遠野の写真は浦田穂一に尽きる。他の人の作品はみな浦田のパクリ」という挑戦的なメールが届いた。うらたほいちって誰だ、知らんぞ? なお鳴海氏は10年以上遠野に勤務していたので同地には詳しい。とりあえず「森山氏は天才だから他人の作風をパクったりしないだろう」と返信しておいたが、本当かどうか自信がなかった。そこで浦田の写真集を探しに行ったのである。

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年譜を辿ると、浦田穂一は1933年岩手紫波町生まれ。青森市の喫茶店に勤めていたとき、客として来ていた地名一二三と出会い写真のイロハを教わる。66年遠野に移住し、バー「CUSTOM」を営む傍ら遠野の写真を撮りはじめ、80年、遠野市立博物館開館に当たり研究員を委嘱され博物館の写真を撮るようになる。82年「第3回田嶋一雄賞アマチュア写真大賞」を受賞、浦田の遠野が全国に認められるきっかけとなった。2003年5月、70歳で急逝。今回借りたのは『遠野昨日物語』(河出書房新社)で、残された5万点のモノクロ作品から厳選して編まれ、石井正己の解説を付して2009年に上梓されている。
森山展の作品集(図録)は送ってしまって手元にないので、朝日ソノラマの現代写真文庫・森山大道『遠野物語』(1976)を引っ張り出した。写真の点数はこちらが多いが、いかんせんモノクロの印刷は普通の紙で階調表現はよくない(後に復刊されている)。JCIIの方は写真弘社がプリントしたそうだが、新しい作品を加え2枚組のレイアウトなどもだいぶ変更しているようだ。森山氏の『遠野物語』が1週間の撮影行で遠野に幻景のふるさとを求めたものであるのに対し、浦田の『遠野昨日物語』は端正な画面に、現実の遠野の山野とそこで生活する人々の姿をしっかり捉えたものと言える。両者のアプローチには大きな違いがあることが分かる。遠野に暮らす者ならではの視線が貴重なのだ。森山氏は本の後書きに事前に資料など調べたりしないと書いているとおり、浦田の作品を見たとは思えない。プリントの美しさが際立つ浦田の写真だが、では彼に写真を教えたという地名一二三なる人物はいったい何者だろうか。

墨田区文花/小村井駅
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この日はその後、亀戸から小村井へ出て「あをば荘」という長屋利用のアートスペースで大塚秀樹写真展「体温の箱庭」を観た。自分が慣れ親しんだ墨田区の家並みを6×6のフォーマットで切り取っている。順光の風景が清々しい。

追記:地名一二三氏は全日写連青森支部の会員らしく、数年前までコンテストによく名前が出ていた。
         

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コメント:

ハードな友人同士

いいですな。遠野を撮り続けた写真家についてまで、見解の相違があるのですな。キューポラについては、鳴海氏優勢と見ましたが、今回も図録を送ってまで、見解をぶつけ合う70歳のお二人が新鮮で好ましい。友情なんて薄っぺら単語ではくくれないこじれをバネにして生きとりますな。お二人は。
 いくら丼と、焼き鳥の店の屋台は文花とありますが、これはどこよ? 奥尻か… 

遠野物語

前回やや過激的なコメントにさっそくのご意見ありがとうございます。それを通りがかりながら、やりとりを鋭く見てくれている人もいてありがたい事です。郷土の書店には多くの「遠野物語」関連の高名な写真家・文筆家のリメーーク版やアマチュアが観光気分で撮って歩いた冊子が並んでいます。高名な方々は「浦田」氏のマネはしていないと思っていますが数多くのエッセーもどきの本には、彼の写真を引用しているものが多いのです。
森山氏の写真の多くは難しくてよく理解できないのです。ザラザラ、斜め、ピンボケ風、そして例えばストリッパーを題材にした作品などは全く理解できないのです。しかし今回の「遠野物語」は「浦田」氏のものまねではないのに観光化ではない作品は素晴らしいと思います。プロの目がレンズを通すと「時代の幻想の遠野」は今そこにある現実の「遠野」に見えるんでしょうね。さすがですネ。

Re: ハードな友人同士

キューポラが私の負け? 何をもってそんなことを……?
まあいい。図録を送ったから論争が勃発したんですが、なあなあでやってるわけじゃないぞってことを知らしめたわけです。通りがかりの素浪人とて油断はせんぞ。いざ刀を抜けーい! なに、それはネギだ?? 失礼つかまつったでござる。

文花は墨田区の一部です。都営住宅もあります。昔々仲間とそこで屋台のおでんを食べたらボラレてしまいました。今でもそのオヤジを恨んでます。

Re: 遠野物語

女性の陰部に全世界を見るのが天才ですからね(ちがうか)。私が自分の陰部を見てもなにも感じませんが、それは凡才だからでしょう。

自分ではオリジナリティーあふれる作品だと思っていたものが、誰かが撮りまくったあとのカスだったというようなことはよくあります。他人の作品を自分の本に黙って使えば問題ですが、そっくりの写真を使うのは止められません。森山・浦田両氏に撮りつくされたかに思える遠野とはいえ、ちょっと山に入れば無数の物語が待ち受けていること間違いありません。鳴海版『遠野今日物語』に挑戦してみるのも悪くない。

訂正

「タダトモ・・・」のコメント「錠剤千錠」のなかで「タイギ」の字句なんですが大納言殿のご指摘とおり使い方に間違いがありました。「・・・大儀のない大儀の・・・」のところですが初めの方は「大義」でした。ご理解くだされたく候!

Re: 訂正

大義なき大儀ですな。了解しました。

常在千畳遠野にあり

遠野や遠野見えるか遠野
まがい物でもなんでもいいぞ

遠野や遠野遠のく遠野
見たことも無く遠のく原野

遠野とは遠い野原と思っていたが
古稀の二人に棲み付く原野か

あそこも遠野ここ遠野
気づけはどこも遠きか遠野

Re: 常在千畳遠野にあり

あれ、いつの間にこんなコメントが……。

遠野、遠野、遠野はいずこ秋の風
遠野なぎこも居るぞえな
南部の血をひく離婚マニア

遠野ノオト、遠野ノート、デスノート 
なにはともあれ遠野です
東京にもたくさんあります遠野です

遠野遠のく遠野ですノート
遠野温泉ススキのかんざしもう一杯いかが?
油断めさるな通りがかり人殿、それは村娘
ではないキツネの遠野なぎこ……

遠野物語

学生時代、柳田センセの本とはあまり相性がよくなくて、記憶に残っているのは『広島へ煙草を買いに行く話』(というようなタイトルでした)位。
ゼミの教授が読むようにと仰有らなかったこともあり、かの『遠野物語』すら敬遠したまま今に至ってしまったような(ーー;)

それにしても、王子の北区中央図書館は魅力的ですね。
建物は勿論、北区在住・在勤者以外にも貸出ししてくれるところが素晴らしい!!
来月のオフは、都電で王子かな(笑)。

Re: 遠野物語

どの図書館でも他区の住人に門戸を開いているはずです。
現に私は新宿区・杉並区のカードを作りました(いまは期限切れですが)。ただし他区の場合、ネット予約はできないそうです。

猥雑な原風景

昨年の12月だったか、吉祥寺で森山大道の写真展を見たとき、入り口で売っていた「遠野物語」の文庫本を買った。題名からは透き通るような田舎の風物を思ったが、そこはさすがに森山大道、あんな田舎町からもきっちりと猥雑風景を拾ってくる。この本を買う時の衝動の中には柳田国男も吉本隆明も絡んではいて、その遠野を森山がどう撮るかに興味があったわけだ。そして期待は裏切られなかった。
日本の原風景のごとき農耕社会と現在的な猥雑を二つながら収めて違和感がない。森山の力技と言う感じがしました。新宿や池袋といった都市の猥雑に比べれば猥雑の度数は低いでしょうが。・
 そんな新宿・池袋を活写した写真展でしたが、一番感じたのは「なぜ吉祥寺なんだろう」ということ。若い女性に人気のこぎれいな街-森山には最も似合わなそうな街でやることもなかろうと思った次第だ。吉祥寺は位置的にはテリトリーと措定している、何かイベントがあれば駆けつけたいところだ。自分に似合っている街とは思えないが。

Re: 猥雑な原風景

私もそれは観ましたが、なぜ吉祥寺かと言えば武蔵野美術館が吉祥寺にあるから。正式名称は武蔵野市立吉祥寺美術館です。『遠野物語』買いましたか。私は記事に書いたとおり、旧版を持っているので新しい復刻版は買っていません。武蔵野美術館は写真の動きにも敏感で、出羽三山などを撮った内藤正敏や森山氏の弟子の村越としやの写真展もここでやっています。

ま、確かに、あのちゃらちゃらした街の雰囲気にはちと似合いませんがね。こうなったら吉祥寺をもっと猥雑にしなきゃ。懐かしの吉祥寺ウニタもなくなって久しいぞ。本家のウニタは守銭奴でも、吉祥寺ウニタはまともだったのにね。

おー、遠野、まだ出ていたのか遠野

うーむ、巌鷲山氏が出てないな。

人妻の歌聞けぬとさびしき野辺地に冬か

野辺地の冬に凍て付く人に押し付けたきや火照ったあそこ

野辺地も遠野も野がついている北の青空みわけがつくか

人妻とひとつになりたきこの冬は野辺地か遠野かどちらでもよし

Re: おー、遠野、まだ出ていたのか遠野

せっつかないでおくんなまし。先週は古紙回収があり、メルマガの仕事が入り、後半は風邪気味でなかなか更新できませんでした。それに下手なネタでは食べてもらえない恐れもあり、慎重にならざるを得ませんよ。ちとお待ち下さい。

遠野辺地 今や枯れ野に雲ばかり

人妻も我に縁なき枯れ野かな

ゆげ噴いて蒸気股間車暴走し






未亡人

大納言殿の昔の時代には聞いたことがあるはず?「喪服の未亡人」子供の頃だったから意味は分からなかったけど、その妖艶な姿にときめいたものだった。皆さんも分かるでしょう!夫に先立たれても籍を抜かない場合は「人妻」と言うそうです。
それよりも、ちょっと面白いものを見つけたので御披露しましょう。
【人妻という言葉ほど男心をコトコトと煮込み、ムラムラといらだたせ、ピリピリと痺れさせるものはない。人妻官能嫉妬不倫離婚再婚流浪淫乱堕落覚醒心中自立遊蕩熟成昼寝、と、妄想は果てしなく広がるが、・・・」以下別の機会にでも】(嵐山光三郎)

北原白秋風・・・(隣家の人妻に手を出して牢獄に入った詩人)

たのしみは朝起きいでて昨日まで無かりし女(ひと)の肌のぬるさよ

駅のそば祝開店の酒場あり慣れぬ人妻行く末のこと

恋という愛という字を密やかにふみに綴りて渡したる女(ひと)

Re: 未亡人

私はロリコンなので人妻の魅力はあまり分かりません。ロリータ人妻なら考えます。遠野物語がなぜ人妻の話になってしまうのか、謎ですね。通りがかり人殿がヘンな方向に話をもっていったのがいかんのです。新作AV『遠野人妻物語』……喪服のA子は……(略)こらーーーーっ!

冬に萌えし遠野人妻物語

喪服着て遠野人妻返り花

恋・愛とスマホに書けばチャラくなり


そうです。おっしゃるとおりです。

今回、あきらかに、私の立ち回りはダイナー氏を苦しめてしまったようです。今回いけなかったのは、遠野を煮詰めさせないまま、次の題目をせがんだことと、巌鷲山様と、「人妻」をくっつけたまま、煽ってしまい、結局、お二人を煽ってしまったことになりました。私個人は「人妻」は、やや、興味が尽きた気持ちになっておりますが、巌鷲さんの登場は喜ばしいことと思っております。自分としてはぜひ人妻だけではない巌鷲さんの歌を鑑賞したいところです。ダイナー氏、疲れさせて吸いません。ノンノン。もう人妻の口、吸いません。

Re: そうです。おっしゃるとおりです。

>人妻だけではない巌鷲さんの歌を鑑賞したいところです。

そうです。花鳥風月です。課長風俗じゃありません。

続・未亡人

「遠野物語を巡る」のではなく、遠野を歩いた頃のお話し。「遠野物語」の多くの民話には恐いお話しがたくさんあるのです。60歳になったら『デンデラ野』に行かなければなりません。姥捨て山です。楢山節考ですな。ふと見たら某通りがかり人氏自らが向っているので、後をついていったのです。そしたら途中「呑兵衛横丁」、別名〈親不孝通り〉(駅のそばにある有名な飲み屋街)に向ったではありませんか。そのためボクの好きなテリトリーなので人妻、未亡人がチラつき、巡る道が狂ったのでございます。

今回は芭蕉風とでも・・・

全山を燃やしつくして秋帰る

街路樹や黄も紅(あか)も消え白を待つ

友が逝き又友が逝く喪の葉書き

Re: 続・未亡人

通りがかり人殿、こんどは呑兵衛横丁に出没してやがる。不届き千万なり~。

デンデラ野 人妻いても60超

燃えつきるにはまだ早い粗大ゴミ

針葉樹 もみじしないが生きてるぞ

散る前に鮮やかとなる山ひとつ

冬野遥かのんべ横丁のほの明かり

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