ビート後始末記 

大島


ふるさとは雪の天気図年始め。雪が降ると思い出す。私の最初の赴任地が三戸であったことは前に書いた。上司先輩の半分が軍隊上がりであったことも。さて働き出して2年目に大事件が起こった。畑作の有望株として国・県を挙げて推進されていた甜菜(ビート)栽培事業が、粗糖の貿易自由化を受けて大赤字となり頓挫したのである。引受先のフジ製糖青森工場が創業5年も経たずして閉鎖された。砂糖の自給という国策として推進された事業はあっけなく覆り、有利な換金作物に望みをかけた畑作農家はハシゴを外されてしまった。多聞に洩れず政治に振り回されて終った例だが、その責任を取った者は誰もいなかったとか。ビート栽培の指導に意欲を燃やしていた中堅のNさんがガックリと肩を落とし、講習会中止の電話を掛けていたのを覚えている。山間地を抱える当地区ではビートに取り組む農家が結構多かったのである。
そこでどういう経緯だったか覚えていないが、育ったビートを収穫するのではなく、栽培面積を測って収量を割り出し相当金額を農家に支払うことになり、農改普及員を総動員してそれぞれの担当以外の町村で一斉に計測する事態になった。時は真冬。工場閉鎖の発表が3月10日、ビートの収穫期が10~11月だというから、収量の確定がなぜこんな時期になったのか不明である。ともあれ私は先輩のTさんと一緒に七戸へ行くことになった。Tさんはアメリカにも研修に行ったベテランで、背高く渋い声のイケメン。仕事はバリバリこなすタイプで私など逆立ちしてもかなわない人であった。4日ぐらいだったか旅館に泊まり込みで、Tさんと手分けし雪の積もった栽培地をバイクで回るのである。2日目までは順調だったが、3日目にどか雪が降って普通のやり方では対処できなくなった。そこで片方の辺を測り、農家の言う面積を割ってもう一方の長さとして書き込んだ。ところがその計算が間違っており、後で県から電話が掛かってきてすっかりバレてしまった。叱られはしなかったが冷汗三斗の状態であった。七戸でのお役目が全部終ったのは土曜日だったのか、ついでにそのまま野辺地の家へ寄ることにして吹雪く峠道にバイクを走らせた。家に着くとヘルメット姿で雪まみれの私を見て祖母が言った。「郵便屋さん?」(ちがーう!)。

東奥日報のWeb東奥ではこの顛末を詳しく報道しているが、我々普及員が後始末に走り回ったことまでは書いていない。なお、六戸町のフジ製糖青森工場の現地雇用者は全員解雇となり、争議の解決に長い年月を要した。今、国鉄(現青い森鉄道)向山駅から専用線を引いた広大な工場跡に当時の名残は何もないという。
    

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コメント:

うーむ、忘れられない日々でしょうな

冷や汗、あぶら汗の仕事は後々まで残るものですな。NさんやTさんという、忘れられない同僚。私にも助けてくれた何人もの仲間達がおりました。そういう人たちに助けられて、ここまで来れた。ようやくそんなことがわかるようになってきたのです。

故郷の天気図はalways snow mark
スペル危ないわ。

故郷で郵便屋さんをやる手もあった

あの写真の中の一人と所帯を持つ手もあった

故郷はそういうことに無関係に雪降り続く

がんばろうダイナー氏。

Re: うーむ、忘れられない日々でしょうな

おおっ、初コメです。ありがとうございます。

そのとーりですが、あの頃は自分はかなり偉いと思ってますので、人に学ぶことが少ないんです。今にしてやっとありがたさが分かってきたような次第です。かなり遅いが一生分からないよりはいいだろうと……。
忘れ得ぬ人々、迷惑掛けた人々、無情に拒否した、あるいは無関心を装った娘さんたちの顔が目に浮かぶ、雪の夜でございます(雪は降ってないけど)。

記憶と歴史

新年おめでとう!昨年を何とか生き抜いた事に感謝しよう。
以前にあった三戸での初仕事の続編かな?いずれにしても語りつくせない想い出が、この年になって泉のごとく湧きでてくるようだね。最近の事はすぐ忘れ、思いだせなくなってきた年齢だが、今必要なのは僕たちの時代を遡って根こそぎ拾い集める事が庶民の本当の歴史なんだろう。
「脱亜入欧」が首都の全国の国民性までおも変えてしまったけど、日本人の国民性というのかな「ともかく全てを水に流そう・・・」でなんとなく収まるはずだったんだが、良悪両面はあるが、現代人はすぐ逆切れしたり何も考えない動物以下の人間になってしまった。その原因は「脱亜入欧」で個人主義がそうさせてしまったのだ。三戸での辛い思いでも先輩の温情が多少なりともあったから今の【大納言】が存在しているのではないだろうか。もちろん僕だって他のコメンターターの仲間の皆さんも同様だと思う。今からでも決して遅くないから喜怒哀楽の生きてきた証しを記録しようよ。(三日坊主の日記はだめだけど・・・)

Re: 記憶と歴史

今年もコメントやら何やらよろしくお願いします。

つづり方運動ではないが、何かがあるから書くのではない、書くことによって歴史は分節され歴史となるのでアール。20代から60代までは迷走に次ぐ迷走を続けた私ですが、70代に入り何とか世間に居場所を見つけられたような気がします。それもブログコメンテーターの皆さんのおかげかも知れません。極私的な記録を綴れば不特定多数の人の目に留まる、読んでもらえる。副作用・反作用も大きいかも知れませんが、メリットは計り知れない。ブログを普及させてくれた今の時代に感謝しましょう。敢えて言えば思い出が美化されてしまうのは難点ですが……。

ナンテン

ナンテンの実は実に鮮やかな朱色で、毒々しい赤いバラの花よりかわいい。でも想い出が美化されてしまうのはナンテン違いですかな。ナンチャッテネ!
それはともかく大納言殿も鳴海殿も今年は未年生まれの年男、でも数えの平成27年は八方ふさがりとか。身体あっちこっち金属疲労の経年劣化でしょうが、あと362日大過なく生きられん事をお祈り申し上げます。
ところで手前は今年も元気の源「人妻シリーズ」で意気盛んに生きまするぞ!。

新年三が日は酒場もお休みなので新年らしく・・・

新玉に僅かに夢を繋ぐため八幡宮のお札いただく

僅かでも夢がかなえと祈るかな神社の鳥居仰ぎ見る我

新玉の年を迎えし大納言ひつじの年の暮生まれとか

ひつじ年はや暮れを待つ大納言生まれた月は師走なりとか

新玉のひつじの年の「年男」意気盛んあれ大納言殿

Re: ナンテン

おめでとうございます。

そのギャグはナンテン? 75点くらいでしょうかね┓( ̄∇ ̄;)┏
八方ふさがり? じゃヤケになって発砲してやる!
それはともかく、八方ふさがりは怖いね。厄年とは違うんですか?

厄年も引きこもりすりゃ大丈夫

どの年も八方ふさがり逃げ場なし

数え年師走生まれはすぐ二つ

今年もよろしくー――っ!

動物とペット

いつだったか「犬畜生」はあっても「ネコ畜生」はないよね?なんたらカンタラの話しがあったのでちょっと面白いものを見つけた。愛玩猫者はなんと思うらん?ので新年書き初めがてらひと言・・・。

「尻舐めた舌でわが口舐める猫好意謝するに余りあれども」(寒川猫待)

犬でもそうだし動物の愛情表現なんだろうから彼らに罪はないが・・・。人間はケツを拭う時は紙を使うので、それと同じ行為なんだろうことはよくよく分かるけど、先述の歌を平気でやらせているのを見ると「ペット狂」としか思えないね。十二支にネコが入ってないのは当然かもね。(あくまでも個人的感想で~~す!!!!)
そういえば某大納言氏はネコ好きだったっけ!

新年らしく穏やかに・・・

我郷里日々静かなり雪のなかモノクロの田舎(まち)懐かしく見ゆ

ふる里に静かに降りし白雪を懐かしと思う東京に降る

深々と降る雪の音(ね)も過ぎしこと灯りなき夜のふる里の田舎(まち)

Re: 動物とペット

> 「尻舐めた舌でわが口舐める猫好意謝するに余りあれども」(寒川猫待)

さむかわねこもちは眼科医で男やもめでしたが再婚して子供もできたとか。彼の歌や境遇は意外と世間に流布しているようですね。糞尿を不浄として区別しているのは人間だけで、動物たちはそれほどこだわっていませんよ。それに、子ネコの肛門をなめることはあっても、自分の肛門はなめられないでしょう。

吹雪止めば永遠の命の星光る

日本無責任体系

政策を掲げて、やらせてはしごを外すというのは日本の政治の常とう手段なのでしょう。最近では、太陽光発電の定額買い取り制度。参入が相次いでくるといきなり、そんなには買い取れないと言い出す。そして最大の共通点は、だれも責任を取らない、ということ。ただ、太陽光発電の買い取りについては、あまり参入が拡大すると、原発なしでも電力足りちゃうんじゃないか、というあちらの危機意識も感じられますが。
 同じ甜菜問題は津軽のほうには出なかったのでしょうね。対馬暖流が洗う稲作適合地と、ヤマセ吹く千島寒流の南部地方では、畑作への意欲が違うでしょう。南部と津軽、気候も土地柄も住民感情も違う二つの地域を一県としてまとめる青森の県政と言うのは難しそうですね。
 それにしても、損害補償をしてまで中止させなければならなかった理由はよくわかりません。北海道十勝など今でも作っているようだし。大規模農業なら採算合うけど、南部あたりの零細経営では輸入原料に太刀打ちできないということでしょうか。
 大納言氏の就職直後と言うと1960年代半ばでしょうか。まだ国民が甘いものにあこがれた時代と言えるでしょうか。その後、糖尿病の元凶のように言われ(これはガセネタらしいが)て控え目にするように言われ、いまや晴れてスイーツの時代として存在を誇示する、砂糖も結構時代に翻弄されている。

Re: 日本無責任体系

おや、冬山から無事生還しましたか?

太陽光発電の買い取り拒否は明らかな嫌がらせですよね。
そんな嫌がらせがすんなり通用するんですからひどいものです。
おっしゃるとおり、ビートは今でも北海道で栽培されています。青森のは品質がよくなかったのかもしれません。津軽は水田中心で、生産性の低い畑作が多い南部とは違います。ビート中止の影響は南部地方に重かったようです。損害補償をしたわけではなく、最後は実際の収量ではなく面積で換算したというだけです。
国民が甘い物にあこがれていたというより、甘味資源の自給という理念と換金性のいい作物で農家の収入を増やそうという願望がくっついて生まれた甘いプランだったようです。作物の性質を無視してむりやり推し進めた側面もあったと聞きます。今のTPPなど農業を翻弄する最たるものでしょう。

寒川猫持

『猫とみれんと』でしたね。
歌集に登場する猫の名はにゃん吉だったかな。
あの女々しいまでの未練がましさは由緒正しい歌よみの姿、と好ましく感じたことでした(笑)。

ところで、母猫が赤ちゃん猫の肛門を舐めるのは、刺激を与えて排泄を促すためです。
ついでに言うと、周囲の清潔を保つとともに赤ちゃんの存在を隠し安全を確保するために、排泄物は舐め尽くします。
あと…たいていの猫は柔軟性がありますから、自分の局部を舐めることは十分可能でしょうね。
>好意謝するに余りあれども………「ども」がポイントかもしれません(笑)。

  • [2015/01/06 16:43]
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  • 干支は猫で星座は猫座の山姥
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Re: 寒川猫持

> 『猫とみれんと』でしたね。
> 歌集に登場する猫の名はにゃん吉だったかな。
> あの女々しいまでの未練がましさは由緒正しい歌よみの姿、と好ましく感じたことでした(笑)。

そうですか。ネコが自分の陰部をなめた後、顔を上げてこっちを見るまなざしは何とも言えないものがありますよね。じゃ、どもども!

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