弟の街とメリーティラー 

16日、例によって今は亡き下の弟の街を訪ねた。彼が遺体で見つかったのは13日の金曜日だから例年13日に行くのを目標にしているが、今年は天気が悪かったのでこの日にした。早いものであれからもう14年が経った。小田急線よみうりランド前駅で降り高石神社めがけて丘を登っていく。街はずいぶん変わってしまったが、行けば何かしら発見がある。なかなか魅力的な街であることもわかってきた。

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今年はいつものコースではなく、地図を確認して少し線路沿いに行きそこから丘の方へ上ることにした。すると見慣れた角のガソリンスタンドの隅に小さな石碑があるのが目に留まった。碑銘は「農機具之元祖 細王舎創業之碑」。脱穀機や小型耕耘機などで国内第1のシェアを持ち、その製品はアジア諸国にも輸出された農業機械メーカー・細王舎のここが跡地だったのである。と言っても細王舎の名前は知らなかったが、戦後いち早く米国のメリー・ティラーと技術提携し、取り回しのよい空冷式エンジンの小型耕耘機メリーティラーを廉価で製造販売した三代目社長・箕輪嘉夫のことは、娘の箕輪徳子さんが写真展で紹介していたので、ある程度知っていた。国産初の小型耕耘機メリーティラーは戦後復興期の食糧増産要求によく応え、その名は小型耕耘機の代名詞となったが、細王舎は後に小松製作所と提携し今はコマツゼノアとしてコマツグループの一翼を担っている。

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さて、高石神社への道はこちら側のほうが細く曲がりくねって分岐が多い。山道がそのまま舗装されている感じだ。そこに一応のお屋敷が建っている。太陽が出てないので方角が分からない。適当に歩いて神社の前に出、そこから下って弟のアパートを目指した。外階段を上がって咲き残る白い八重桜の写真を撮る。アパートの北側、かつての果樹園が宅地に変り、子供たちが遊んでいた。いつものように遊水池を見て、弟の友人が住んでいたもう1つのアパートを見に行く。この友人も弟の死後、自責の念に駆られたように会社を辞め、消息不明となった。今まで人の気配がなかったアパートの窓に、今日は珍しく電灯が点っていた。隣の土建会社の窓から中の額が見え、そこには弟の名前の1文字、「道」とあった。弟はこのことを知っていたのだろうか。前にも書いたが、弟の魂は故郷に帰らず、この辺りを彷徨っているというのが私の考えである。だからこそ、こんな偶然のような出来事にも意味を感じてしまうのだ。

弟を探す旅はまだもう少し続きそうだ。

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コメント:

おお再びめぐって来たのですな

弟さんはまだそこいらを浮遊していると。しかし、ダイナー氏がそう思いたいからではないか。そこなら、年に一度は会える。野辺地へ帰られては、それもままならぬ。弟さんも、兄を想い、帰りそびれている。兄が希望をもって、日々を生きてゆくことに尽きる。それ以外に弟さんも成仏のしようがない。生きられよ。なあんてえらそうに、言うが、なかなか、これが………私も口だけで…

Re: おお再びめぐって来たのですな

野辺地には年に2回は帰ってますからね。以前は当地に伝わる宗匠俳句のことを知った(2011/4)。昨年は気がかりだった大家さんの弔いができたし、今年は偶然にも細王舎の跡地に出くわした……。

「そう思いたいから」というのはまったくその通りで、当然ながらそれ以上のものではありませんが、弟もまた故郷には確執がありましたので、すんなり帰るわけにはいかないんじゃないかな。

弟思いの兄

命日ですか。弟さんの霊を訪ねて歩く‥経過は詳しくわからないのですが、大納言さんの優しさがしみじみと感じられます。さぞかし弟さんも感謝していることでしょう。
大納言さんもまた、遠く離れた故郷を思っているのですね。

Re: 弟思いの兄

コメントありがとうございます。
弟は2001年4月13日金曜日・三隣亡に遺体で発見されました。生活保護を受けて糖尿病の治療に勤しんでいた……と言えば聞こえはいいけど病は相当悪かったようです。こうなったのは、父に「普通の糖尿じゃないから注意せよ」と言われながら、見舞いにも行かずアパートを訪ねることもしなかった私の責任でもあります。亡くなる1年ほど前に珍しく私の住まいを訪ねてきて、何時間か話したのが最後になりました。
祖母を除けば極身近な者の死に直面した最初の体験でした。現実の冷酷さを思い知らされた事件です。

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