中上健次とは誰か? 

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4月13日、今年も亡くなった弟のアパートを訪ね、高石(川崎市麻生区)の丘を一巡りして帰ってきた。弟のことは毎年書いているので詳しくは触れないが、彼が亡くなってもう16年。追悼の旅はまだしばらく続きそうだ。

             
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駅前のマクドナルドの裏手に五反田川が流れており、私製(?)の橋が架かっている。渡ったところに棕櫚というカフェがあるが、やっているのかどうか分からない。まず川とこれを撮るのが毎年の儀式。護岸の深い五反田川がクネクネと流れる丘陵地に、鉄道そして住宅街と飲み屋群が緊密な風景を形作っているのがこの地の特徴である。南口を撮り、陸橋を渡って北口へ出て津久井道を線路沿いに西へ歩き、GSのところから高石神社の方へ上がっていく。魚屋も馬頭観音もお地蔵様も、その上の中学校も変わらない。校庭では青い体操着の生徒たちが走り回っていた。
弟がいたアパートは今年もひっそり静まりかえっていた。平日のせいだけではなく部屋がだいぶ空いているようだ。アパートの桜の木は切られたが、近所の家の桜が満開の枝を延べていた。傍の丘の斜面も桜と菫、菜の花が満開であった。
そこから下って千代ヶ丘に出、細い用水路みたいな川筋を辿ってまた駅に戻るのが恒例のコース。途中の深ピンク色のベニトキワマンサクが見事だ。今年は細山調整池のゲートが開いていたので中へ入って少し写真を撮った。広大な谷間(普段は水は入っていない)に桜が見事な満開である。線路の南側を通って駅に着く頃には、夕陽が射してやっといい雰囲気になった。川っぺりに建つ小屋みたいな焼き鳥店では、女将がぼけっとテレビを観ていた。パチスロ店の駐車場周りを撮って、最後にドトールコーヒーに入る。誰とも口をきかない旅はこれで終わりだ。

                         
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土曜日はくまくま会例会で中上健次について写真家の渋谷典子が話すというのを知り、A氏を誘って参加した。場所は日大文理学部の百年記念館。くまくま会というのは、中上が創った熊野大学の聴講生による熊野を語る東京の会の略だが、主宰者が急逝したため今回で終了となる由。この日の参加者は20人余り。
会は中上の戯曲『かぬかぬち』の上演の一部始終を捉えたETVのDVDから始まる、この時写真家として同行し、かつ夫婦共々中上と親交のあった渋谷が語るエピソードの裡に、稀代の作家の実像を垣間見ることができた。中上唯一の戯曲とされる野外劇『かぬかぬち』は、壮大なスケールで新宮の神社跡を使って上演され、3日間で2,000人が観たという。かぬかぬちとは金属神のことらしい。中上にオーラはないと話していた渋谷だが、途中涙ぐむ場面もあった。それを指摘したA氏の眼力は鋭いと思った。最後は自己紹介で、中上ともくまくま会とも全然関係のない私にはきつかった。中上と小学の同級生だったという女性研究者も参加していた。中上をケンジクンと呼び手をつないだという。

               
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アルブミンから古典技法へ 

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七転八倒してやっと東京歌壇へ投稿する短歌1首ができた。歌を考え出すと、ああでもないこうでもないと3日以上掛かるときもあり、頭脳が他へ回らなくなる。歌集1冊分の名歌を一気呵成にひねり出した啄木(実際それは白鳥の歌であった)でも天才茂吉でもない私には、他愛ない素材であれ考え抜くことが全てである。しかし、如何に苦心作で名作のつもりでも選者の佐佐木先生が認めてくれなければそれで終わり。現在は東京歌壇も錚々たる名手がひしめき合い、大変な難関になっているのだ。この際、先生に付け届けをするのも妙策だろう。

                    
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年来の冷え性(寒い寒い病)について、たかしくんからアルブミン値をチェックせよというアドバイスがあった。血清アルブミンは肝臓で生成され食事で直接どうこうというものではないが、俗にいう老人は肉より魚という説はうそで、肉を食べた群の方が死亡率が低かったという。その指標となるのがアルブミンだということだ。実際アルブミンを上げる力は魚より肉が何倍も高い。
そのあたりの理屈はともかく、この間、食物の陰性陽性については気を配ってきたが、動物性タンパク質が知らず知らず少なくなっていたのは事実だ。牛乳は飲まず卵も3日に1個食べればいい方だった。肉か魚かではなく魚さえ少なくなっていたのだ。草食系を通り越してポテンシャルの低い枯れ草系に成り下がっていたようだ。私の場合まずはその転換が必要だろう。動物性タンパク質を適度に増やし、アルブミン値が上がるように心がけたい。
歯の治療は心配したほどではなかった。左上の歯の被せものを外し土台の歯を整形した。虫歯はその程度のものだった。ただし、外した後の歯茎はかなりムニャムニャするので、これが来週までに治らないとまずい。

         
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ところで、アルブミンといえば写真家なら鶏卵紙(アルブミンペーパー)という前時代の印画紙を思い浮かべるかもしれない。今日はちょっと珍しい写真ギャラリーへ行ってきた。場所は池尻の住宅街、会期は土日のみ、ガレージの車をどかしてそこに展示する、スタッフは親子3人……ファミリームードのギャラリーだ。Monochrome Gallery RAINの名はオーナー雨宮一夫氏の雨に由来する。“写真の原点への回帰”を謳い2015年3月14日にオープンし2年目だというが、行ったのは今日が初めて。主に現代作家が古典技法で制作したモノクローム作品を取り扱う。現在はスプリングセッション2017として、藤田修(フォトエッチング)、コウムラシュウ(カリタイプ & リスプリント)、日下部一司(ゼラチンシルバー & ガム印画)、白石ちえこ(フォトドローイング/ぞうきんがけ)、安田雅和(カーボンプリント)の各作品を展示している。こうした作品は近似したものをデジタルでつくれないわけではないが、立体感や耐久性では古い技法が勝り、複製不能の稀覯性も高い。今回の展示では、白石ちえこのいわゆる「ぞうきんがけ」(印画に絵の具を塗って拭き取る手法)が圧巻であった。ダゲレオタイプで作品をつくる新井卓も出てきたし、デジタル隆盛の反動か古典技法が見直されつつある。

              
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猫が嫌いな方のために 

この冬はワタシ的にものすごく寒かった。アンダーシャツ(長袖+半袖)2枚とセーター+ベスト、それにズボン下の組み合わせがすっかり定番になった。気温の変化に順応しきれなくなっているようだ。老化なのだろう。先が思いやられる。そんなわけで今回は猫の画像はない。猫嫌いのジジイも安心して見て下され。

                  
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エープリルフールというので東京新聞は毎年「こちら特報部」の見開き2ページを使ってフェイク記事を載せている。金さん銀さんに銅さんという妹がいたとか、雪男は実在するとか、最初は騙されていたが最近は何だかマンネリに感じて読む気がしない。貴重な紙面をもっと有効に使えよと言いたくなる。それより佐藤正明の政治漫画、世界の首脳が優しくなって安倍晋三が滂沱の涙を流す1コマがいい。TBSの情報7Daysニュースキャスターによると、韓国の新聞は朴槿恵前大統領が脱走したというフェイクニュースを載せた由である。

                     
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山姥さんがコメントしていたが、中学校の保健体育「武道」に「銃剣道」が加わるそうだ。銃剣道は維新後にフランスから入ってきた銃剣術を嚆矢とし、第二次大戦後、身体育成や精神修養を目的とする武道として再興したものだという。競技人口は約1万人でその8割が自衛隊関係と聞けば実態が知れよう。全日本銃剣道連盟が初代会長に旧陸軍大将今井均を戴いて結成されたのが1956(昭和31)年であった。銃剣道は確かに国体競技種目ではあろうが、中学で教えるべき競技はもっとあるのではなかろうか。今このタイミングで銃剣道を中学に導入する意図を問いたい。
たまたまと言えそうにないのが、保育現場で国旗と国歌に「親しむ」と明記する保育指針を厚労省が正式決定したというニュース。文科省が幼稚園の教育要領に同様の趣旨を盛り込んだことを受けた幼児教育の整合性が理由だと。また、教育勅語について「憲法や教育基本法に反しない形で教材として使用を認める」閣議決定をしたとも報じられている。政権やその取り巻きは、オレたちの好みじゃないからと憲法でも簡単に変えてしまいかねない連中だ。今後は塚本幼稚園の運動会に似たカルト的風景が全国に強制されていくのだろうか。

                      
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目黒のPOETIC SCAPEへ野村浩 展“Doppelopment”を観にいく。一昨日は行こうとしながら目黒駅前のバス停で挫折した。なにしろアクセスが悪い。目黒までの経路が遠い上に、駅から歩くと20分掛かるしバスの本数も少ない。今日もバスが時間通り来ず15分も待たされてしまった。このバス停はなぜか風当たりが強く、ものすごく寒い。帰りは駅の手前の権之助坂で降り、目黒川沿いの桜を見て弘南堂書店という古書店に入る。岩波文庫の『窪田空穂随筆集』を買ったついでに、「こちらは弘前と何か関係があるんですか」と訊いてみた。正ちゃん帽の店主は面白くなさそうな顔でぶすっと「関係ないです」と答えた。

               
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付記:政治漫画の作者は佐藤正明でした。訂正しました。
                        

続ハイシャ復活戦 

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22日、歯科クリニックへ行く。10年ぶりなので改めて歯のX線写真を撮り、歯科衛生士にチェックしてもらう。すると意外なことが分かった。左上のかぶせた歯でデンタルフロスが切れるのは虫歯になっているからだという。かぶせ物の中で虫歯が進んでいたことになる。X線でも分かるくらいだから軽度のものではなかろう。右上には根っこがむき出しになっている歯もあるが、そこも虫歯ができているという。その他指摘されたのは、歯の表面が削れている部分がある(不適切なブラッシング)ことと、歯を食いしばったり歯ぎしりをしたりしていないかということだ。夜中のことは分からないものの、起きているときに歯を食いしばることはよくあるような気がする。歯を食いしばったりすると歯茎の中の骨がこぶみたいに出っ張るのだという。そういう個所がいくつかあった。これが進むとブラッシングがやりにくくなるのだ。
しかし全般的に親知らず以外の歯がほとんど残っていて優秀だと言われた。失った1本はやはりかぶせ物の中で虫歯が進行していたケースで、こちらは根管治療も全然やっていなかったのでしかたがない。子供の時の歯科医が悪いのだが、それ以上に甘いものを食べすぎた自分のせいだ。これは今ブリッジになっているが、将来の耐久性にいささか不安がある。ともあれ、今回は歯石をすっかり取ってもらいすっきり。次回の診察は4月5日の予定だ。

                              
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久々に本を2冊読み終えることができた。まず、光人社NF文庫の新刊『本土空襲を阻止せよ!』。著者の益井康一は元毎日新聞記者。陸軍報道班員として終戦まで中国にて取材を続けた。一号作戦をはじめB29の本土来襲を阻止すべく大陸で戦った日本軍の克明な戦闘記録。渡辺洋二『本土防空戦』の主要なネタ本の1つと見た。
もう1冊は高安国世歌集『光沁む雲』'75(現代歌人叢書)。高安は関西アララギから独立して「塔」創刊。弟子の永田和宏による後書きにこうある。「見える以上のものを見ていこうという意志を持続することは、真実が幾重にもカモフラージュされつつ隠蔽されている現在の情況にあって、何よりも必要なことであろう」(太字は原文傍点)。
                        
  夜に移る群衆か濃く流れつつ迷路地下街のいずこに果つる
  トランジスカンチア・アルビフローラ・アルボビッタータ呟けば小
  さき祈りのごとし
  燃えきわまる炎のごとき夕ぐれの一樹の声を聴きそびれたる
  薔薇の青き蕾鬱々と群れ立てりにがき歓びといえど遠しも
  湖に出て風は舞うらし繋がれし白きヨットの向き変わりゆく
                           
高安の歌は好きだが、短歌において見える以上のものを表現することはなかなか簡単ではない。

                       
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ハイシャ復活戦 

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土曜日、眼科へ行く。主訴は左目のかすみが強いことだが、視力検査ではある程度数値が出るためか先生の危機感は薄い。昨年は白内障が右目にあるとのことだったが、今年は両目にあると言われた。そのせいだろうというのだが、ではなぜ右にも症状が出ないのか納得のいく説明はない。それ以上聞くと切れそうな雰囲気なのでとりあえずは引き下がった。何とか病院の何とか部長をやったとの経歴がサイトに載っており、確かに診察は緻密で丁寧だが器が小さい。限界かもしれない。来週は数年ぶりに以前の歯科クリニックで歯を診てもらうことにしている。

                          
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松方弘樹に続き渡瀬恒彦が胆嚢がんで亡くなった。享年72。獅子座の生まれだ。いろんな作品に出ていたようでつぶさには知らないが、テレビの十津川警部シリーズ(TBS)は亀井刑事を伊東四朗が演じ、高橋英樹-愛川欽也コンビで30年続いたテレビ朝日の同シリーズともども楽しませてもらった。彼の映画で忘れられないのは巨匠山本薩夫の『皇帝のいない八月』である。確か名画座で『新幹線大爆破』と二本立てだったような気がする。渡瀬はクーデターを画策する若きリーダーを演じ、これが役者としての飛躍の契機になったという。当初の主役の想定は兄の渡哲也だったが、スケジュールの都合が付かず渡瀬にお鉢が回った。しかし三島由紀夫ばりのアジテーションをぶつ場面など、常識人の渡瀬に狂信的なカリスマ性は出せず、いささか残念な結果に終わった。むしろサブを務める三上真一郎がよい。
小林久三の同名小説を映画化。現体制に不満を抱く自衛隊の過激分子が三々五々首都をめざし、主力の渡瀬隊は寝台特急さくらを列車ジャックするのだが、当時の国鉄にも自衛隊にも協力を拒まれ、列車のシーンはセットとミニチュアで撮っている。そのため特急の疾走感が全然感じられず、銃撃戦の指揮の拙劣さと相まってフラストレーションが溜まった。『白い巨塔』の山薩ならではのオールスターキャスト大作だが完成度はイマイチ。象徴となるはずの交響曲「皇帝のいない八月」(佐藤勝作曲)もメリハリを欠いた。ラストはロボミーを施された三國連太郎の表情が不気味だった。

                            
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大久保辺りでは、60年安保世代の自死が取りざたされたらしい。仄聞する限りでは生活苦からの焼身自殺だったとか。おそらくは80歳前後。国家(行政)の施しは要らない、生活保護は受けないという自恃であったのか。かつて共同的営為が除外した生活――家族や老いや貧困や死という極私(きょくし)的なものがそれぞれに立ち塞がっているようだ。少し前に書いた友人Y君も全共闘の端くれだったらしいが……。